音楽と写真の製作において、マスタリングという作業工程はまるでそっくりだ。そして、この部分がそれぞれのプロとアマチュアを決定的に分ける要件だろう。

音楽の制作のマスタリングという作業工程は、シーケンサーで音を重ねて一度完成した音楽を、プレスするメディアや音響の事まで踏まえて、改めて各素材に立ち返りながら聴こえを良くする調整工程の事。

写真においては、RAW現像やデジタルリマスターの作業がそれにあたる。印刷前の段階で、印刷方式や印刷媒体、サイズ、利用される環境に応じて調整し、その時のメディアと印刷機械用に作られたプロファイルをあててデーターを吐き出す。

この音楽や写真のマスタリングは、その制作工程で最も奥深く、専門性が要求される仕事と言われている。要求されるスキルは恐ろしく専門的だ。

作業は実際のメディアではなく画面上で行う為、経験と熟練度も要求される。この時、膨大なデーターを取り扱う事になる為、最先端のマシンを使う。

何が良くて何が悪いのか。目的や用途、その趣旨主題によってプロジェクトの目的を理解し目標へ向けて調整できなければならない。また、クライアントの目的からその業界のマーケティング知識、そして何より科学的なベースまで理解していないと、適切なマスタリングは行えない。

そうしてマスタリングを追及していくと、色彩や音場などついての思考はやや哲学的観点に及ぶ程奥深い。